虚数の情緒

虚数の情緒―中学生からの全方位独学法

虚数の情緒―中学生からの全方位独学法

この本、週刊文春の書評で取り上げられているのをみて購入。 1,000ページを超える分厚い本。 価格も、子どものお小遣いではちょっと手の届かない額。
それでもこの本をお勧めするのは、「人文科学」と「自然科学」を統合して、かつ基礎から筋道立てて学べる内容になっているから。
書名から受ける印象は「高等数学の解説本」だが、冒頭はいわば「学問に対する心構え」という内容になっている。
小学校を卒業したばかりの読者を想定してか、書き出しはやたら振り仮名が多いのだが、それも最初のうちだけ。 巻末になるとファインマン経路積分まで扱っている。
一気に読了するのではなく、中学から大学にかけて徐々に、繰り返し読み返すような性格の本だと思う。


Amazonの書評の中には、天皇制や国旗・国歌についての記述に反発しているものもあるが、これは評者が左翼的思想の持ち主だからだろう。 今は手元にない(仕舞い込んで出てこない)ためうろ覚えになるが、著者はこの本の中で自身の考えを述べた上で「こうした考え方に賛同するにせよ反発するにせよ、諸君はこれらについて一度は真剣に考えなければならない」という趣旨のことを書いている。
そうした記述があるにもかかわらず、木を見て森を見ないような論評を加えるあたり、「革新的」な評者の視野の狭さを感じずにはいられない。


私が購入したのは刊行後間もない時期だったので、書店で平積みされていたが、今は店頭に置いている書店は少ないであろう。
安くはない本なので内容を確認した上で購入されることをお勧めするが、学問の本質を希求する方ならば、買って後悔することはないと思う。 あと20年早く刊行されていたら、私の学生生活はもっと豊かなものになっていたかも知れない。