驚異の口承伝

昨日に続いて、今日もお勧めの一冊をご紹介。 これも週刊文春の書評(立花隆氏の「私の読書日記」)で紹介されている。

一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史

一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史

ネイティヴアメリカン・イロコイ族の末裔が、一族に伝わる口伝を書き留めた壮大な記録。 天変地異により住処を追われた一族が、長い旅の末、新天地にたどり着く物語。
これまでの研究では、北米・南米大陸の原住民の先祖はモンゴロイドであり、氷河期には地続きだったベーリング海峡を渡って大陸に移住したと考えられているが、この記録はそれとよく符合する。
噴火や津波により多数の死者が出たこと。 水没し始めた海峡。 ロッキー山脈と思われる山越え。 謎の人種との血の交わり・・・。
長い年月を経て信憑性が低下しているはずの口伝なのに、彼らの苦難の旅路が強烈なリアリティをもって胸に迫ってくる。
私は、北海道の原野を見ると妙な既視感を覚えるのだが、この本を読んだ時も似た感覚を経験した。 「原初の記憶」を呼び覚まされる感覚、とでも言おうか。
表紙や各章に挿入される、故・星野道夫氏が撮影した写真も印象的。