バウンス可能な大光量フラッシュを初心者に勧めることの是非

久々にカメラ関係の話題。 先週多くのブックマークがついた記事より。

  • 外付けフラッシュ(できればGN50クラス)
  • 単焦点レンズ
  • 18-200クラスの万能ズーム

Wズームレンズキットなんて買う金があるならマジでこれを買うべき。
(中略)
悪いことは言わない。騙されたと思ってこれを買うべし。

デジタル一眼レフ購入時に買うべき3つのアクセサリ(レンズキットではなくこれを買うべし) - キャズムを超えろ!

概ね同意できる内容なんだけれど、初心者にガイドナンバー50クラスのフラッシュを勧めているところはいただけない。
「参考になった」ってコメントしている人が多いけど、GNo.50クラスのフラッシュがどんだけ大きいか知ってるのかな? 週末に早速店頭に出向いて実物を見た人は、その大きさに唖然としたんじゃなかろうか?
もちろん「大は小を兼ねる」で、大光量のものの方が撮影シーンは広がるが、大きくて重い分、取り回しで苦労することになる。 グリップタイプ、もしくはクリップオンタイプをブラケットで固定した形態は「報道カメラマン」みたいに大袈裟な格好になるし、ホットシューにクリップオンする場合でも、重心が高くなり不安定になる。 とても「気軽にスナップ」というわけには行かなくなってしまう。


初心者のうちは撮影対象を絞らずあれこれ撮りたくなるものだし、そうしているうちにコツもつかめてくる。 だからなるべく用途の広いアクセサリーを準備していろいろ試してみるといい。 そう言う意味では、バウンス撮影可能なフラッシュを勧めるのは悪くないと思う。 問題なのは「デメリットをちゃんと示さず、メリットだけしか述べていない」ところ。
バウンス撮影は、基本的には屋内撮影のテクニックだ。 何度も撮り直しがきくような状況で、人物や小物を撮影するには向いている。 id:wa-ren氏が小物やフィギュアを例にしているように。 逆に、瞬間を切り取るようなもの(野鳥の撮影とか)や風景写真(特に遠景撮影)には不向き…というより、適用できないことがほとんどだということは、少し考えればお分かりであろう。 さらに言えば、屋内であっても反射素材の色の制約を受ける。 壁が茶色だったので、笑顔で微笑む美少女の肌が土気色…なんて写真が撮れたら、被写体本人には見せにくかろう。
そういう限定された状況下でのテクニックを、元エントリで初めてバウンス撮影を知ったという初心者に向けて「基本中の基本」などと紹介して「これを買うべき」と勧めるのは罪作りだなぁ、と思う。 初心者が実力をつけ、やがて被写体や自分の撮影スタイルが固まってきたときに、安くはない値段で買ったアクセサリーが殆ど活用できなかったら、やはり「騙された」と思うのではあるまいか?


ここから先は一般論になるけど、HOWTOやライフハック系の記事は、そもそもの前提が違うと最適解にはならないと思う。 むしろ、薬どころか毒になりはしないか? 美味い蕎麦屋を教えたら、実はその人、ソバアレルギーでした…みたいな。 そもそも最適解って何? 正解って必ずあるの?
私は「人は多様」だと常日頃から考えているので、条件を付けずにアドバイスすることはないし、無条件なアドバイスは疑ってかかるようにしている。
元エントリには「最終的には自己責任で判断して」という真っ当な前提があるのだろうけど、「マジでこれを買うべき」なんていうid:wa-ren氏の勢いに、つい反応してしまった。