魔法少女まどか☆マギカ 第8話〜第9話

痛くないなんて嘘だよ…観ているだけで痛いよ…。

第8話「あたしって、ほんとバカ」

鬼神のごとき立ち回りで魔女を屠るさやか。 しかし手に入れたグリーフシードを、借りを作りたくないからと杏子に投げ渡してしまう。 それは、自分だけはエゴで魔力を使わないという矜持の現れでもあったろう。 だが「報われぬ善行」で溜め込んだ不満は、彼女を気遣うまどかにも、心無い言葉となって向けられる。
自己嫌悪に陥ったさやかにはもはや「世界を救う」という使命感しか残っていないが、救うべき世界の汚い一面に接し、その最後の支えをも失ってしまう。 グリーフシードでの浄化を拒んだ彼女のソウルジェムには穢れがどんどん蓄積し、やがて異変が現れる…。

第9話「そんなの、あたしが許さない」

穢れを溜め込み魔女に変容したさやか…それは全ての魔法少女の成れの果ての姿であった。
親友を失い深い悲しみに暮れるまどかに対し、キュゥべえことインキュベーターは、魔法少女の正体とその残酷な定めを躊躇いもなく語り聞かせる。
それでも「さやかを元に戻せるかも知れない」という一縷の望みに賭け、「かつてさやかだった」魔女と対峙するまどかと杏子。 だが二人に容赦なく襲いかかる魔女には、さやかの面影は微塵も無かった。
さやかを救うための戦いは杏子の攻撃を鈍らせる。 追い詰められた杏子はまどかをほむらに託し、捨て身の攻撃を仕掛けるのだった…。

所感など

以前「使い魔が魔女になる」という説明がありましたが、ソウルジェムの穢れが蓄積されたらどうなるかは伏せられていたので或いは…と思っていたら、悪い予感が当たってしまいました。 善行が報われず、結局は信念が折れてしまうさやか。 似たような経験は誰にでもあるんじゃないでしょうか? この作品の異様な迫力は、非日常を舞台にしながらも、日常的にある、出来れば向き合いたくない嫌な問題を取り扱ったところから生じているように思います。
マミ先輩の壮絶な最期とか、共食いするキュゥべえとかのショッキングなシーンは、あくまでも補完的なものじゃないかと。


第9話では、キュゥべえエントロピーとか言い出してビックリ。 この言葉、正しく理解するには熱力学や情報工学の知識が必要ですが、平たく言えば拡散(「でたらめさ」「乱雑さ」)の程度を表す尺度。 例えば物質の温度で言えば、均一なのがエントロピーの大きい状態。 「エントロピーは増大する」というのが、熱力学の研究から得られる知見であります。
作中、キュゥべえは「宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方」と言っていますが、エネルギーの総量は一定不変ですから、正確には「利用できるエネルギーは」と言うべきでしょう。 彼が言うように、エネルギーの変換過程で生じたロスは熱エネルギーとして放出されるため、それがエネルギーの最終形態となります。 熱エネルギーに局所的な不均衡があっても、エントロピー増大によりやがて均一になり、それ以上何も変化が起きなくなる状態に行き着きますが、この熱平衡状態が宇宙終焉シナリオの候補のひとつと考えられています。

宇宙の熱的死(うちゅうのねつてきし)とは、宇宙の最終状態として考えられうる状態で、宇宙のエントロピーが最大となる状態を指す。

熱的死 - Wikipedia


キュゥべえの言う宇宙の寿命とは、このことなのでしょう。 魔法少女は、(実際にはあり得ませんが)それを逆行させる存在ということになっています。
ちなみに、冷媒を使った熱交換器やペルチェ素子で温度差を作り出すことは出来ますが、作り出した温度差以上のエネルギーが必要なことに注意。 その際のロスはやはり熱エネルギーになりますし、作り出した温度差は、放っておけば解消してしまいます。 エントロピーの増大は、逃れられない自然の摂理なのです。


しかしもう、まどかの契約でマミ先輩が復活してキャッキャウフフ…という線は絶望的ですね…。
ひょっとしたら、マミ・さやか・杏子を全て復活させて、代わりにまどか自身が犠牲になる…という「グスコーブドリの伝記」的な展開があるのかも知れませんが。

・・・
そしてちょうど、このお話のはじまりのようになるはずの、たくさんのブドリのおとうさんやおかあさんは、たくさんのブドリやネリといっしょに、その冬を暖かいたべものと、明るい薪(たきぎ)で楽しく暮らすことができたのでした。

宮沢賢治 グスコーブドリの伝記

それはそれで悲惨な話になるなぁ…。