デジタル放送受信環境の整備−CATV補完計画続報

概要

拙宅では難視聴対策のためCATVが無償で視聴できるが、デジタル放送の一部はパススルーされておらず、視聴することが出来なかった。(cf.CATV補完計画 - しまうま技研
これを補うべく受信用機材を導入し、新たにJOUS-DTV(テレビ埼玉デジタル放送)とCSデジタル放送の受信が可能になった。

はじめに

これまで何度か書いてきたが、拙宅にはCATVが導入されている。
CATV(J-COM東京)からはVHFのみならずUHF、BS、CSが混合送出されており、選局に迷うくらいの多チャンネルをゴーストの殆どない良好な状態で受信できるのが嬉しい。
特に深夜アニメの宝庫である独立UHF局*1は、テレビ埼玉東京MXテレビテレビ神奈川の3局が受信でき、番組によっては週に3度楽しめる(録り逃しても他局でやり直しがきく)のは、大変有難いことであった。


しかし3月にデジタル放送対応HDDレコーダーを導入してみると、独立UHF局のデジタル放送が視聴できないことに不満を感じるようになってきた。 在京キー局のデジタル放送は昨年12月からパススルーされており観られるのだが、肝心の独立UHF局についてはパススルーされておらず、しかも東京MXテレビ以外、今後パススルーされるかどうかも不確定なのである。(cf.どうなる?区域外再送信 - しまうま技研


CSデジタル放送も、視聴できるのはガイダンスチャンネルや通販系チャンネルくらい。
それらをパススルーしていること自体、ちょっとした驚きであったし、有料チャンネルの一部は一見パススルーしているように見える(契約を促す画面が出る)のだが、それらをパススルーしてしまえばCATV局の実入りがなくなってしまう訳で、素直にパススルーしているとは思えない。


既に多くのチャンネルを受信できる状況で、さらにキッズステーション・アニマックス・AT-Xといったアニメ専門チャンネルまで契約するかどうかは正直微妙ではあるが、「CATVであるが故に視聴できない」というのは、何だか損した気分である。
結局、これらを受信しようと思ったら、自前でアンテナを設置するしかない。
これが「CATV補完計画」の出発点である。


なお放送局名について、正式な呼出名称を用いたり愛称を用いたりして統一していないが、その点はご容赦戴きたい。

基本方針

  • デジタル放送に対応している機器は、今のところHDDレコーダー(RDZ-D90)1台だけなので、他の機器の受信系統には手を加えないこととする。
  • RDZ-D90の受信系統についても、現在受信できているチャンネルを犠牲にすることなく、「受信できるデジタル放送を増やす」ことを最重要事項とする。

RDZ-D90のRF入力は3系統あって、それぞれ下記のようになっている。

端子名 用途
VHF/UHF 地上アナログ放送(VHF/UHF)用
地上デジタル 地上デジタル放送(UHF)用
BS/110度CS-IF BS/CS110°デジタル放送用

これまでは壁面のF型コネクタから供給される信号を単純に分配し、それぞれの端子に入力していたが、今後は地上デジタル端子とBS/110度CS-IF端子にはそれぞれ個別に設置したアンテナからの入力を加えることになる。
VHF/UHF端子には従来通りCATV局からの信号を入力するので、在京VHFキー局や独立UHF局のアナログ放送が観られなくなることはない。
なおRDZ-D90には、BSアナログチューナーはもはや搭載されていない。

購入機材

まず、地上デジタル放送用のアンテナを購入しなければならない。
魚の骨みたいな形をしたお馴染みの八木・宇田アンテナ(cf.八木・宇田アンテナ - Wikipedia)は、素子数にもよるが一般的には中・弱電界向きで、サイズもちょっと大きめ。
最近では強電界向けに、コンパクトで洗練されたデザインのものが数社から発売されている。
私は DX ANTENNA の UDA-100 をチョイスした。

BS放送については、アナログ・デジタルともCATVで何ら問題ないし、降雨による信号減衰を考えるとむしろCATVから供給される信号の方が信頼性が高いが、BSとCSを分波・混合する民生用機材が見当たらないので、BS/CS110°兼用アンテナからの入力で置き換えてしまう。
アンテナは条件さえ満たせば何でも良いのだが、数少ないセンターフィード型デザインが気に入ったので、TDK の BCS-45DHV をチョイス。(この製品は、設計がちょっと古いのだが・・・)

さらに信号強度が不足する場合に備え、ブースター(DX ANTENNA GCU-381A-B)も合わせて購入した。

このブースターは、BS/CS110°アンテナ(のコンバーター)への給電と、UHFとBS/CSの混合器としての役割も兼ねている。


その他、ベランダ用アンテナ取り付け金具・同軸ケーブル・分波器などの小物も購入しているが、これらについての説明は割愛する。

アンテナ設置

解説が前後してしまうが、BS/CS110°アンテナは南西方向*2に向けなければならないので、この向きに向けられないとか、何らかの障害物がある場合はアウトだ。
私の場合、南向きのベランダがあるし、アンテナ取り付け予定位置とチューナーとの間もそれほど離れていないので問題はなかった。
それよりも心配していたのは、地上デジタル放送についてである。


在京キー局と東京MXテレビのデジタル放送は東京タワーから送信されているが、その方向には高層マンションがあり見通せない。 またテレビ埼玉の送信所方向はベランダの向きとは正反対で、自宅自体が障害物になっている。 どちらも反射波を拾うしかない状況であった。
デジタル放送はアナログ放送と違って原理的にゴーストは発生しないし、日本で導入されたISDB-T方式は、他国のものに比べてマルチパス耐性が良好だとされているが(cf.地上デジタルテレビ放送 - Wikipedia)、信号そのものが弱ければ画像が乱れてしまう。
結局、アンテナの向きは手探りで決めるしかないが、テレビ埼玉を受信できても在京キー局が犠牲になるかも知れないし、最悪、どちらも受信できず地上デジタル用アンテナの出費が無駄になる可能性もあった。
これが唯一の気懸かりであり、以前のエントリで「徒労」とか「失敗」について言及しているのも、そのことを指している。

結果(各局の受信状況)

結論から言うと、在京キー局とテレビ埼玉については問題なし。 BS/CS110°も同様。
東京MXテレビは時々ブロックノイズが出てしまい、何とか視聴は出来るものの、録画しようという気は起こらない。
チバテレビの信号も受信できているが、残念ながら全く画像・音声が復調できなかった。
テレビ神奈川は、やはり信号自体、全く受信できなかった。
以下はRDZ-D90の「アンテナレベル」で表示されるレベルゲージの値である。
なおこの値は信号の強さそのものではなく、CN比を簡易測定したもののようだ。 単位はdB(デシベル)のようだが、これも確証はない。

放送局 伝送チャンネル リモコンキーID CATVでの値(MAX) 私設アンテナでの値(MAX)
NHK総合・東京 27 1 60 58 -2
NHK教育・東京 26 2 61 59 -2
日本テレビ 25 4 61 58 -3
テレビ朝日 24 5 61 58 -3
TBS 22 6 60 58 -2
テレビ東京 23 7 60 43 -17
フジテレビ 21 8 61 59 -2
テレビ埼玉 32 3 - 49 -
東京MXテレビ 20 9 - 34 -
チバテレビ 30 3 - 16 -
テレビ神奈川 18 3 - 0 -

地上デジタル放送のレベルゲージでは、50以上が緑、38〜50未満が黄、38未満が赤となっている。
テレビ東京テレビ埼玉は黄色ゲージだが、これまでのところ、特に受信に問題はなかった。
東京MXテレビは34で赤レベル。 上述の通り、時々ブロックノイズが出たり、画面がフリーズしたりする。
復調できないチバテレビは16(赤レベル)であった。


BSデジタル放送については、CATVでは28〜34程度であったものが、私設アンテナ導入後は若干下がって27〜30となった。
しかしいずれも緑ゲージ内に納まっている*3ので問題はない。


CS110°デジタル放送も、キッズステーション・アニマックス・AT-Xすべてで契約を促す画面が出てくることを確認。
また今日は都合の良いことに無料放送日(毎月第1日曜)であったため、実際に一部受信確認も出来ている。

補遺

荒天時対策

業務用の大口径・高感度アンテナを使用しているCATVと異なり、私設アンテナでは豪雨・降雪などによる受信障害も考慮して置いた方がよい。
このため受信系統には同軸切替器を挿入し、スイッチひとつで元の接続(CATVからの信号供給)に切り替えられるようにしてある。

リモコンキーIDの重複について

新聞のテレビ欄で「チャンネル」と書かれているものは、地上デジタル放送の場合、従来の「チャンネル」とは異なるものだ。
Wikipediaでは「リモコンキーID」と書かれているように、これは「論理的なチャンネル」であって、従来慣れ親しんだチャンネル(周波数帯を区切った伝送チャンネル)とは違う。
関東地方ではテレビ埼玉チバテレビテレビ神奈川すべてに「3チャンネル」が割り当てられているが、これはどれか1局しか受信できない訳ではない。(民放連はそうしたいようだが)
RDZ-D90の場合、自動スキャンさせた際にリモコンキーIDが重複すると、031-2 などとチャンネル表示がされ、区別ができるようだ。
ただし、チバテレビが受信できないため、確認は出来ていない。

*1:実際はVHFの空チャンネルやCATVチャンネルに変換されている

*2:春分秋分の日の午後2時頃の太陽の位置が目安

*3:地上デジタルとBS/CSデジタル閾値は違うようだ