「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」考

膨らんだものは、いつか萎むのが道理。
右肩上がりの成長は既に過去のものとなり、日本は今、緩やかに衰退しつつある。 少子化もその表れのひとつであって、この流れを押し止めるのは容易ではないだろう。


この作品は、少子化がさらに進んで生徒数の減少による学校の経営難が深刻化している、約30年後の日本が舞台。 若年就労も一般化して進学率がさらに低下するという、負のスパイラルに落ち込んでいる状況だ。 生徒も即物的で覇気がない。
そんな学校に「まっすぐGo!」が座右の銘というヒロイン・学美が転校してきて周囲の意識を変えて行き、最後には学校の危機さえも救ってしまう、というストーリー。


直情型の主人公が周囲を感化し困難を乗り越える、というプロット自体は目新しいものではないが、「少子化」という今日的な問題を題材にしている点が新鮮。
もっとも「少子化が進んだ近未来」という設定は、「学美が変える前の環境」に説得力を持たせるものとして機能しているに過ぎず、「少子化とどう向き合うか」といったレベルにまでは(当然ながら)踏み込んでいない。
しかし、生徒会活動を通して友情や自立の精神を育んでいくヒロイン達を丁寧に描写しており、それが本作品のテーマであり、制作サイドからのメッセージなのだと思う。


前半(6話くらい)までの見所は、平野綾嬢演じるツンデレ風味の芽生ちゃんが学美たちに感化され、トラウマを克服して生徒会役員になるところかな。 芽生の内面を描く演出がなかなか良かったと思う。
後半は、他校に吸収合併されようとする母校の危機をヒロインたちが救う話。 これはこれでひとつのヤマ場なんだけど、前半に比べて「予定調和」って言葉が頭の中でチラチラしてしまった。


キャラクターデザインも見所のひとつかな。
何故か分からないけど、ヒロインたちが随分と幼く描かれている。 高校生という設定なのに中学生みたいだし、小学生だと言われても違和感がない。
これは、成長した後との対比を際立たせるためかなとも思ったけれど、最終話で描かれた卒業後のヒロインたちを見ても格別差異はなかった。 ぷにキャラ萌えが狙いかなとも思うが、姉妹校の生徒会長は歳相応にデザインされているから、彼女との対比を狙ったのかも知れない。
この幼さを更に補強しているのが口元の表現。 まるで愛玩動物のような上唇の描き方は面白いと思った。
他に「髪の毛のグラデーションが新鮮」という意見もあるようだ。 他でも既にやっていそうな感じだけど、どうもこの作品が初の試みらしい。(確認はしていないが)


あと、さり気なく画面に出てくるSF風ガジェット(PDA風生徒手帳、空間投影型ディスプレイ、フライングボードなど)が小憎らしい。 あくまで「近未来を演出する小物」っていう地味な扱いにしたことが、かえって良かったと思う。


・・・と、ここまで書いてきてナンだけど、実は私、生徒会というものにはずっと懐疑的だった。
生徒の自主自立と言ったって、所詮学校という組織の掌で踊らされているだけではないのか、と。
だから「生徒会アニメ」というジャンル(みたいなもの)があって、それが結構人気を博しているらしいと知って、ちょっと違和感を感じている。 みんなそんなに生徒会が好きなのかい?
・・・もっとも、描かれ方もいろいろだから一概には言えないかな。 「ルルーシュ」で描かれた生徒会には別段抵抗はなかったし。 多分私は、友情とか自主自立とか、対話による説得といったものに説教臭さを感じてしまうんだろう。 「まなびストレート!」も作りが上手くなければ、恐らくスルーしていたに違いない。


最後に結論めいた纏めを書くとすれば、「キャラ萌えだけを狙ったアニメだと思ったら大間違い」といったところかな。 生徒会に懐疑的な私ですら取り込んだ作品だから、その狙いは成功してると思う。
ただ最終話で、ヒロインたちが(無色になる)スプレーで落書きして回る行動の意味が理解できなかった。
連帯感を補強するための、軽い共犯行動? 何だかね、制作サイドに学生運動のシンパがいるような感じがした。


P.S.
書き出しの文章がですね、公式サイトにある文言と似てしまうんですよ。
それで違いを出そうと苦心して、こんな時間になってしまいました・・・。