バオー来訪者

バオーの話が出たついでに。
今年は「ジョジョの奇妙な冒険」の連載開始から20年目にあたるからか、第1部が劇場版アニメ化されたりといろいろ賑やかだ。 ファンとしては嬉しい限りだが、かの名作「バオー来訪者」にも光を当てて欲しいと思う今日この頃。


この作品の凄さは、まず第一に人工的に創られた脳の寄生虫が、宿主を不死身の生物兵器に変容させるという着想にあるだろう。
寄生虫を扱った作品としては他に岩明均氏の寄生獣があるが、「バオー」はそれより前の作品だから、岩明氏もこの作品にインスパイアされたのかも知れない。
逆に、荒木氏がインスパイアされたと思われるものがある。
 秘密結社「ドレス」は旧日本軍の残党が組織したものということになっているが(仄めかしだったかも知れない)、これは多分、旧日本陸軍731部隊が念頭にあったのではないか。 連載に先立つこと数年前、これを題材にした森村誠一氏のノンフィクション「悪魔の飽食」がベストセラーになっている。

ストーリー構成の巧みさも特筆に価する。 荒木氏のストーリーテラーとしての実力は広く知られているところであるが、本作も、バオーの正体がなかなか明かされないままストーリーが展開していく意外性がある。
そして「ジョジョ立ち」と呼ばれる個性的なポーズや、ユニークなセリフ/擬音も、既にこの頃から確立されていることが窺えるのである。
これだけ名作の要素を備えており、またマンガ界の重鎮・鳥山明氏も好きだというこの作品があまり話題に上らないのは、やはり20年以上も前の作品だからなのだろう。
それではちょっと残念なので、コミックスではなくDVDをちょっとだけご紹介。

バオー来訪者 [DVD]

バオー来訪者 [DVD]

私が購入したものは、発売元が東芝デジタルフロンティア株式会社、販売元がパイオニアLDC株式会社(現ジェネオンエンタテインメント株式会社)のもの。 商品型番はPIBA-7174。 付録の小冊子には、「ファンロード」1986年5月号に掲載された荒木飛呂彦氏のインタビューが転載されている。
このアニメ、OVAっぽいけど、元々は劇場版として作られたと何処かで読んだ記憶がある。 約50分の短い作品だけに、上映館がかなり限定されていたようだが。
出来はと言うと、前半は見応えあるけど、後半息切れしちゃった感じ。 特に、ラストの成長したスミレが別人みたいで泣ける。 設定資料(DVDの映像特典)で見た「17歳のスミレ」には面影が残っていたから、作画崩れなんだろうね・・・。 それでもスタッフロールに京都アニメーションの名を見つけたりしてちょっと驚いたり。
前述の通り、ファンロードの記事やら映像特典(設定集など)が付いているから、荒木ファンならばそれなりに楽しめるものになっていると思う。


最後に、これはと思う場面をご紹介。(あまり誉められたことではないけれど)

これは予知能力を持つ少女スミレが見た、暗殺者「第22の男」のビジョン。
原作でも鳥肌が立つくらい凄みのあるシーンだったけど、それを上手く映像化してます。