「ぼくらの」第8話「復讐」

パイロットはチズ。 ジアースを駆って、敵よりもまず先に外道・畑飼を追い詰めるのだが・・・。


前々回(第6話)では、カコに対して小悪魔的な言動を見せたチズ。 第7話では、彼女がそうなってしまった理由が明かされる。
家族とのちょっとしたすれ違いから生じた心の隙間。 その隙間に変態教師・畑飼が巧妙に忍び込んでくる。 チズが陥穽に陥っていく過程が観ていて痛々しい。
自分や姉があれだけの仕打ちをされておきながら、なおカコに対して畑飼を慕うようなことを言ったのは、カコを振り払うためだけでなく、そうでも言わなければ自分が惨めになってしまうから、と思えるのだがどうだろう?


そして今回、件の復讐劇となるのだが、姉が庇ったため失敗。 治まらない怒りはそのまま敵に向けられて、文字通りボコボコにされる敵ロボ。 しかしその怒りは、戦闘中彼女が口にしていたように、自分へも向けられていた。
それは、家族に不信感を抱いたことや変態教師を振り切れなかったことに対する、自責の念というものだろう。
戦いのあと「私、これで死ぬんだ・・・仕方ないよね、私、悪い子だし・・・」と呟き、姉の幸せを願いながらこの世を去るチズに、胸がいっぱいになってしまった。
録画しておいた「らき☆すた」を続けて観るつもりだったけど、その気が失せてしまったよ。


チズは「ジアースを操縦したものは死ぬ」ということを予め知った上で操縦した、最初の人間だった。
巨大な力を自由に操れても、それが命と引き替えだと知ったら、果たして人はどう振舞うのだろう?
何かを信じているか、誰かを守ろうとしているか、それとも罪を償おうとしている人間にしか、そういう運命を受け入れられないんじゃないか。 チズの場合、贖罪意識があったからこそジアースを操縦できたのだと思う。
この辺り、森田監督もブログでこう述べている。

 じゃ、命を捨てて戦おう、自分の命を犠牲にしようという気持ちが生まれるには何が必要か、とあれこれ考えてみるわけです。すぐに思い当たるのは「愛するもののため」で、これは戦争に出かけて行く兵隊さん方の気持ちだと思います。
(中略)
 ただ、みんながこれで納得するとも思えません。ぼくらのではダイチの物語がこれに近くて分かりやすいですが、中には家族との関係が薄いキャラクターもいますからね。
 そこでもうひとつひらめいたのが、深い自責の念、と言いますか、反省の気持ち、と言いますか、罪を償いたいという気持ちが心に湧いた時に、人は謙虚になり、自分を犠牲にし、社会に奉仕する気持ちが生まれるのではないか、と考えてみたのです。
 「罪の償い」
 これが私が「ぼくらの」に加えた要素です。

「ぼくらの」3話によせて - 森田宏幸のブログ

今回のサブタイトルは「復讐」だったけど、個人的には「贖罪」の方がしっくりくるような気がしてる。
それにしても・・・次回(第8話)予告でチズが下腹部に手を添えていたのは、やはりそういうことだったわけだ。 それだけで事情を悟らせるのは、ありがちな演出なのかも知れないけど、やはり巧いと思った。