true tears オープニング考 − 季節の移ろいが意味するもの

本作のOPは本編同様、高く評価されているようです。
ワンシーン毎にその良さを論じたいところですが、それは既に他所でもやっていることですから、このエントリでは表題の通り、OPで描かれている季節の移り変わりに着目することにします。 これは、OPが本編のストーリーラインを暗示しているのだろう、というお話。


アニメに限ったことではありませんが、登場人物の心情やその場の雰囲気を、天候を利用して効果的に見せる演出手法があります。 例えば本作第5話のラスト近く、眞一郎が顔の切り取られたアルバム写真を見つけるシーン。 その直後に雷鳴が轟き、天気が崩れて雨が降りだす、といった具合。
季節もまた然りで、春夏秋冬にはそれぞれの"表情"がありますが、本編ではそれを巧く演出に取り入れているようです。


この物語の起点は秋ですが、それは第1話で、乃絵が登っている木が紅葉していることから分かります。 木の実も、秋の季語みたいなもんですね。 その後も第6話まで、季節が秋であることを要所要所で裏付けるシーンがありますが、その一端については、数日前に書いたエントリでも触れました。

眞一郎が母にアルバムのことを尋ねる場面では、彼女が冷蔵庫の野菜室に梨と茄子を入れてますが、これはどちらも秋の食材。 物語上も今は秋(晩秋?)なので当たり前と言われればそうなんだけど、細かいところまで配慮が行き届いているなぁと感心。

true tears 第6話「それ…なんの冗談?」 - しまうま技研

第6話での「雪、降りそうだな」という純のセリフは、冬が近いことを示す婉曲な表現ですね。 季節は穏やかな秋から厳しい冬へ − これはそのまま、登場人物が織り成す人間模様の暗示であると考えられます。 やがて彼らは、つらい試練に立ち向かうことになるのでしょう。
そしてそういう視点で観ると、OPは本編の流れをトレースしていることが分かると思います。


冒頭の落ち葉が舞い上がるシーン、季節は言うまでもなく秋。
傘をさした愛子から連なる山々へとパンするシーンでは、冷たい雨が霙(みぞれ)になり、やがて雪へと変わりますが、もう説明は不要でしょう。 ちなみにこのシーン、当然ながらCGを使っているはずですが、それにしても雨→霙→雪への移り変わりが実にスムースで感心させられます。
そして、緑の若葉が風に乗って流れて行くOPのラストは新緑の季節。 拗れてしまった人間関係も、やがては氷解するであろうという希望が見えてきます。 そう言えば背中合わせのヒロインたち、始めと終わりでその距離が縮まっていますが、これも彼女たちの和解を象徴しているのかも知れません。


以上、深読みしてスベってるかも知れませんが、こういうことを考えながら作品を観るのも、またオツなものですよ。