true tears 第8話「雪が降っていない街」

幸せの真っ只中にある乃絵とは逆に、奈落の底へ落ち込んで行くような比呂美が不憫でなりません…。


付き合い始めた乃絵と眞一郎。 比呂美や愛子のことを思うと手放しで喜べない眞一郎だったが、相手を思いやる乃絵の暖かさに包まれ、やがて迷いを振り切るように創作に打ち込んでいく。
一方、二人が気持ちを通わせて行くのとは対照的に、愛子と比呂美の心中には寒風が吹き抜ける。
告白を即座に断られたことを思い出し、閉店後の店内で泣き崩れる愛子。 仲睦まじい二人を寂しげに見つめる比呂美…彼女は、竹薮で眞一郎に駆け寄る夢を見る。 その先に突然現れる乃絵。 封印したはずの幼い頃の悲しい思い出が重なり、「置いてかないで…」という言葉が思わず口を衝いて出てしまう…。


そんな比呂美も、当人の前では相変わらず気のない素振り。 でも、乃絵と親しいことをそれとなく責めてるところは、まるで「乃絵が男子を逆ナンしてる」という噂を彼の耳に入れた時のようで、これはどう見ても焼き餅です。
彼女に優しい言葉をかける眞一郎の父に対し、母親ときたらもう…。 沈む気持ちを引きずったままデートに臨んだ比呂美は、純から乃絵のことを聞かされ「逆ナン」の誤解は解けるものの、胸に渦巻くわだかまりを完全には解消できない。
それはいつしか激しい嫉妬となり、デートの帰りに偶然出会った乃絵に対し、酷い言葉をぶつけてしまう。 まるで眞一郎の母が彼女にそうしたように。 比呂美はとうとう悪意のリフレクターに身をやつしてしまったのか?


自分の本心に戸惑いながら帰宅した比呂美は、眞一郎の母が処分したアルバムの焼け残りを見つけてしまう。 顔を切り取られた肉親の写真を見たら、誰しも平常心ではいられないだろう。 一方で、嫉妬とはどういうものか身をもって知ってしまった彼女は、そもそも仲上家に来たこと自体が間違っていたのだと悟り、家を飛び出し石動家へと向かう。
雪が降る中、渋る純に無理を言ってバイクを出させ、「雪が降っていない街」という漠然とした目的地へ向けて逃避する比呂美なのであった…。


以前は好きでありながら辛い記憶と結び付いた「雪」は、比呂美にとって今の境遇そのものの象徴。 想いを寄せる眞一郎も、優しい言葉をかけてくれる彼の父もいるが、養母の仕打ちは余りにむごい。 そして、自分からどんどん遠ざかっていく眞一郎…。
「雪が降っていない街」へ行きたいというのはもちろん、そんな境遇から逃げ出したいという思いから出た言葉なんだろうけど、それは一体どこなのか?
愛子の告白…あれを受け止めてしまったら眞一郎アウト。 酷いようだけど、暫くは距離を置くしかないだろうねぇ…。
乃絵の愛情はどこまでも利他的で、今時こんな娘いるのかな、なんて思ってしまう。 普通に描くと現実味が薄れそうだから、逆に「突拍子もない娘」という設定にしたんじゃない? それを「電波」だの何だの言われて、可哀想だよなぁ乃絵…いや、「不思議ちゃん」呼ばわりした私も同罪ですが。 純が比呂美に向かって言った「あんた、乃絵のこと誤解してないか?」という言葉は、もしかしたら制作サイドの思いも少し交じっているかも知れんね。
そうそう、私には「地べた」が比呂美と重なって見えてきましたよ。 眞一郎は「雷轟丸の意思を継ぐもの」として明示されてるので分かり易いんですが、「地べた」が何の象徴なのかは、これまであまり深く考えてませんでした。
しかし絵本の中で雷轟丸が見下ろす「地の底のよう」な「下界」、そこで餌をついばむ「地べた」は、飛べないまま深みから這い上がれない比呂美そのものではないか、と思えてきたわけです。
そんな「地べた」を乃絵は最初、ぞんざいに扱っていたものの、今では愛情を注いでる。 「寒そうだったから」と温めてやったりとか。
これは眞一郎を抱きしめたのと同様、辛い境遇にあるものへの慈愛の発露なんでしょう。 とすると…制作サイドの意図が何となく分かった気がします。
純の乃絵への愛情を「シスコン」と看破した比呂美サンだけど、これは多分に毒を含んだ言葉なので彼女には使って欲しくなかったな。 その破壊力はクールな純が赤面したことからも分かる通り、決して小さくないと思うんですよ。 今回は、他にも比呂美の優等生的ではない部分がいろいろ観られて面白くはあったけど。 で、次回はとうとう停学くらうのかぁ…。