HZ904 A-5

直流に対しては、コイルはただの導線だし、コンデンサは絶縁体に過ぎない。 しかし時間と共に変化する交流の場合は、両方とも抵抗のように振舞う。 ふっしぎ〜。
コイルの場合、電流の増減に応じてその変化を打ち消すように逆起電力が生じる。 これが誘導(性)リアクタンスと呼ばれる、交流に対するコイルの抵抗分になる。 コンデンサの抵抗分は、容量(性)リアクタンスと呼ばれてる。
純粋な抵抗とリアクタンスをひっくるめたもの、それがインピーダンスだ。(少々乱暴な物言いだが)
Wikipediaでは、もっとスマートに解説されている。

電気回路におけるインピーダンス
インピーダンスは、交流回路における電圧と電流の比である。

インピーダンス - Wikipedia

回路にリアクタンス分があると電圧と電流は(一般的に)同相ではなくなるため、インピーダンスの計算は少々厄介になる。 ベクトルを使えば手っ取り早く表現できるのだが、複素数を導入するとインピーダンスをまるで抵抗のように扱うことができるため、計算がさらに楽になる。
ちなみに電子工学の世界では、虚数単位にはiでなくjを使う。 iは電流を表す記号として定着していたため、iの次の文字で字面も似ているjが選ばれたのだろう。 このjを定数より前に記すところも、数学とは違うところだ。
さて、問題です。

この問題は、インピーダンスの概念とコイルの誘導(性)リアクタンスについて知っていなければ解けない。
解法のステップは以下の通り。

  1. 回路全体のインピーダンスを求める
  2. 回路全体に流れる電流(交流電源から流れる電流、即ち抵抗R_1に流れる電流)を求める
  3. その電流によって生じる、抵抗R_1の両端の電圧降下を求める
  4. 電源電圧から抵抗R_1両端の電圧降下を減じたもの、それが抵抗R_2の両端に掛かる電圧である
  5. 抵抗R_2両端の電圧とその抵抗値から、オームの法則を使って電流\dot{I}を求めることができる

まず、回路全体のインピーダンス\dot{Z}を求めよう。
Lが普通の抵抗ならば、
\dot{Z}=R_1+\frac{1}{\frac{1}{L}+\frac{1}{R_2}}
で計算できるのだが、コイルの誘導(性)リアクタンスはjX_Lなので、
\dot{Z}=R_1+\frac{1}{\frac{1}{jX_L}+\frac{1}{R_2}}
となる。
ところで、題意よりR_1=20[Ω], R_2=20[Ω], X_L=20[Ω]であるから、これらを代入して式を整理する。
\begin{eqnarray}\dot{Z}=20+\frac{1}{\frac{1}{j20}+\frac{1}{20}}\\=20+\frac{1}{\frac{1+j}{j20}}\\=20+\frac{j20}{1+j}\\=20+\frac{j20(1-j)}{(1+j)(1-j)}\\=20+\frac{j20-j^{2}20}{1^2-j^2}\\=20+\frac{j20+20}{1+1}\\=20+\frac{j20+20}{2}\\=20+j10+10\\=30+j10\end{eqnarray}
これでステップ1完了。 j^2=-1であることに注意。
ステップ2では、抵抗R_1に流れる電流を求める。 これを\dot{I_0}とし、電源電圧を\dot{E}とすると、
\begin{eqnarray}\dot{I_0}=\frac{\dot{E}}{\dot{Z}}\\=\frac{200}{30+j10}\\=\frac{200}{10(3+j)}\\=\frac{20}{3+j}\\=\frac{20(3-j)}{(3+j)(3-j)}\\=\frac{20(3-j)}{3^2-j^2}\\=\frac{20(3-j)}{9+1}\\=\frac{20(3-j)}{10}\\=2(3-j)\\=6-j2\end{eqnarray}
次のステップ3からステップ5までは、面倒だから一気にやってしまおう。
\begin{eqnarray}\dot{I}=\frac{200-20(6-j2)}{20}\\=10-(6-j2)\\=10-6+j2\\=4+j2\end{eqnarray}
よって、答えは選択肢1の4+j2[A]となる。 今日はここまで。