ネイピア数の収束証明

読者の中に、掲題のテーマに関心を持っておられる方がいらっしゃるようです。
詳しくはシリーズものとして執筆中(企画中)の別エントリで書くつもりですが、いつになったら書き終えるのか自分でも良く分からない状態なので、ネイピア数が定数である(=発散せず収束する)ことの証明だけ先にやっつけてしまいましょう。 ただし、証明とは言っても正攻法ではありませんが。


まず、指数関数を
y=a^x+b
としてこれを微分すると
y' = a^x \cdot \lim_{\Delta x \to 0}\frac{a^{\Delta x} - 1}{\Delta x}
を得ます。


このとき、
\lim_{\Delta x \to 0}\frac{a^{\Delta x} - 1}{\Delta x}
極限値が1である、即ち
\lim_{\Delta x \to 0}\frac{a^{\Delta x} - 1}{\Delta x} = 1
が成り立つときのaの値がネイピア数、つまりeなのであります。 \Delta xが限りなく0に近い数値であるとして便宜上\lim_{\Delta x \to 0}を取り去り、式を変形してみましょう。
\begin{eqnarray}\frac{a^{\Delta x} - 1}{\Delta x} = 1\\a^{\Delta x} - 1 = \Delta x\\a^{\Delta x} = 1 + \Delta x\\a^{\frac{\Delta x}{\Delta x}} = (1 + \Delta x)^{\frac{1}{\Delta x}}\\a = (1 + \Delta x)^{\frac{1}{\Delta x}}\\\end{eqnarray}
ここで右辺に\lim_{\Delta x \to 0}を戻してやると
a = \lim_{\Delta x \to 0}(1 + \Delta x)^{\frac{1}{\Delta x}}
となりますが、これはそこかしこで説明されているネイピア数の定義そのものですね。
\Delta x \to 0の時、\frac{1}{\Delta x} \to \inftyですから、h = \frac{1}{\Delta x}(即ち\Delta x = \frac{1}{h})とおいて
\lim_{h \to \infty}(1 + \frac{1}{h})^h
と表すこともできます。 Wikipediaは(現時点では)後者のスタイルを採用してますね。


で、出発点に立ち返りますが、何で
\lim_{\Delta x \to 0}(1 + \Delta x)^{\frac{1}{\Delta x}}
或いは
\lim_{h \to \infty}(1 + \frac{1}{h})^h
が収束する(=発散しない)かというと、元々
\lim_{\Delta x \to 0}\frac{a^{\Delta x} - 1}{\Delta x} = 1
が成り立つaの値がネイピア数と定義したわけで、aが一定の値に収束しないようでは、そもそもこの式が成り立たなくなるのです。
ちょっと逆説めいてますが、お分かりでしょうか?
なお数学的に厳密な証明に関しては、生憎筆者は門外漢ですので分かりません。 機会があれば研究したいと思います。 では。

2013年1月6日追記

上記証明が間違っているとの指摘を戴きました。

そのページの証明は「逆説めいて」いるのではなく、「循環論法」になっています。
そこに書いてある文章は「ネイピア数は収束するから収束する」という文章と同じ意味です。
要するに、「数学的に厳密じゃない」とかではなく、完全に間違っています。

http://d.hatena.ne.jp/k87p561/20120205#c1329495569

数式自体に誤りはないはずですが、結論の導出が数学的手順を踏んでいなかったようです。
自分なりにいろいろ調べてみたのですが、誤りを正せるまでに至らないのが門外漢の悲しいところ。
地道に精進を重ね、いずれちゃんと訂正したいと思います。